【特別インタビュー】 水素ガスのヒトへの効果発現メカニズム解明へ
慶應義塾大学・水素ガス治療開発センター研究代表者/慶應義塾大学・医学部スポーツ医学総合センター専任講師
医師・医学博士 勝俣 良紀 氏
水素ガス吸入療法の研究で日本をリードする慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)水素ガス治療開発センター。昨年3月の院外心肺停止患者の救命および予後の改善に対する水素吸入療法の有用性を発表した論文は、世界中の研究者から大きな話題を集め、日本でもテレビで報道されるなど、水素吸入療法への注目が一気に高まったことは記憶に新しい。水素医療の具現化に向けた先導的・戦略的研究拠点としての役割を果たす一方で、民間企業との産学連携により、ヘルスケアやスポーツ分野での水素の有用性研究を進め、社会で役立つ知見の提供にも注力している。同センターの研究代表者である勝俣良紀先生に、現在進めている研究について話をうかがった。
――これまでの研究成果と、現在進めている研究について
現在は、水素のPK(薬物動態)とPD(薬力学)の側面を含めて、細胞、小動物、大型動物、ヒトの研究を進めている。分野としては、救急部門(心筋梗塞や心肺停止、出血性ショック、下肢虚血など)および、運動や皮膚疾患などに対する研究を実施している。また、我々のラボではヘルスケアやスポーツ分野で、民間企業との共同研究も行っている。現在は、水素ガスを含侵させたゼリーの有用性が、これまで水素水で発表されたデータと同等であるのか、他にも水素ガスを溶解した風呂での入浴や水素ガスを含侵した軟膏の塗布による、皮膚疾患に対する有用性などについて研究を行っている。これらは現在進行形につき、発表できない内容も多いが、近い将来、研究成果を論文等で発表できればと考えている。
――水素研究における今後の目標について
水素ガスの様々な効果や安全性については、ヒト臨床研究も含めて、多くの成果があり、疑念の余地はないと考えている。一方で、そのメカニズムに関しては、不明な点が多い。多くの方が納得するメカニズムの解明なくして、真の意味での普及はないと考えている。例えば、水素ガスは無触媒の生体反応条件下では、酸素ガスを含むいかなる生体化合物とも反応しない反応性に乏しい物質である。水素ガスが直接、タンパク質と反応して活性体にするようなメカニズムは考え辛い。ただし、人間の体はガスを反応体にできることは、酸素ガスがエネルギーを作っていることからも証明されている。おそらく水素も我々の生体中の何かを変化させることで、効果を発揮している。これまでの検証から、我々は、生体内で最も多く存在している金属である鉄が、水素ガスの効果を仲介する担い手であると考えている。このような仮説のもとに、水素ガスのヒトにおける効果発現のメカニズムの解明に向けて、研究を推進している。つづく
詳しくは健康産業新聞1800号(2024.11.20)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら