特集【納豆由来・機能性素材】 ナットウキナーゼなど、欧米で需要増
健康食品で利用されている納豆由来の機能性素材は、ナットウキナーゼ、納豆菌、ビタミンK2、ポリアミンなど。なかでも1980年に倉敷技術科大学の元教授・須見洋行氏が「血栓を溶かす酵素」を探している際に発見したナットウキナーゼが代表格だ。ナットウキナーゼの機能性研究は、血栓溶解作用以外に、血液凝固、血液粘度低下作用、免疫賦活、脳機能改善まで広がっている。最近では、SARS-CoV2スパイクタンパクの分解作用が認められるなど、新たな作用にも注目が集まっている。原料は国産と台湾産が主流となっており、血栓の元となるタンパク質を分解する力「FU値」によって活性値が測定され、各社2,000~12,000FU程度の間で規格化している。
機能性表示食品では、1日当たり2,000FU値、3.97mgの摂取量としている製品が主流となっている。現在のナットウキナーゼの原料価格は、国産・海外産によって各社バラツキがあるが、5~15万円/kg程度。主要メーカーのヒアリングから国内出荷量は、少なくとも50t /年、60tに届く勢いと推測される。また近年は、中国だけでなく欧米での利用が広がっているのも特長だ。米国では、コロナ禍で免疫対策に対する意識が浸透。ナットウキナーゼの需要増に繋がっている。
納豆菌由来の機能性素材は、このほか納豆菌、骨サポート向けのビタミンK2が人気素材として利用されている。納豆菌を由来とするビタミンK2は骨サポート向けに利用が進む。成分は、「メナキノン-7」と呼ばれ、魚や鶏肉等に含まれるメナキノン-4(ビタミンK1)に比べ、身体への吸収効率が高いとされる。欧米では、ビタミンC、Dと並ぶ人気成分で、ヴィーガンの骨サポート素材として利用されるケースが増えているという。特にフィンランドなど、日照時間の短い国での需要が高い。また近年、日本でも骨粗鬆症が課題となっており、納豆菌由来のビタミンK2の活用が期待される。
発酵食品として機能性研究が進む納豆菌は、芽胞を作る菌のため、熱に強く、胃酸で溶解せず生菌のまま腸内に到達する。乳酸菌と同様に、数百種類の菌株が存在しており、プロバイオティクス原料としても注目されている。乳酸菌のように各社菌数を全面に押し出す原料は多くはないが、各社300~1,000億個/gの菌数をラインアップしている。機能性研究は、ビフィズス菌の増加、クロストリジウム(悪玉菌)の減少などによる腸内環境改善、便通の改善、免疫賦活、肌保湿などのエビデンスを有する。剤型は、完全に水には溶けないが、水分散性に優れ、サプリメントやドリンクにも配合が可能。プロテインに用途提案を行う企業も。一方、強い菌が故に、工場設備を汚染させる恐れがあるため、加工工場が限られるという課題もある。こうした中、帝人目黒研究所は、今年3月に殺菌納豆菌を上市。ポストバイオティクス原料として幅広い用途開発に手応えを感じているという。つづく
詳しくは健康産業新聞1796号 (2024.9.18)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら