特集【注目のオーラルヘルス素材・商材】 口腔領域のサプリメント開発が活発化

 食事による栄養補給はもちろん、ウイルス・細菌の侵入阻止、会話等の社会的コミュニケーションなど、口腔機能の果たす役割は大きいが、最近は国民の3人に2人が歯周病とされる。加齢に伴い歯周病やドライマウス罹患者は増加する傾向にあり、口腔の虚弱性「オーラルフレイル」対策は喫緊の課題だ。さらに近年の研究では、う蝕(虫歯)と歯周病の口腔2大疾患が、糖尿病や心疾患、がん、アルツハイマー病などのトリガーになるとの研究も報告されている。政府も健康寿命の延伸を実現する施策の1つとして2025年から「国民皆歯科健診制度」の導入を予定する。フレイル対策、生活習慣病予防、健康寿命延伸の観点からもオーラルヘルスケアの重要性が高まりつつある。

 

 口腔内の常在菌バランスを整える「口腔プロバイオティクス」に、健康食品業界も反応を見せている。ここ数年、ミュータンス菌(虫歯菌)やジンジバリス菌(歯周病菌)の抑制効果に対するエビデンスを揃えた素材提案が活発化してきた。トレードピアでは、世界的な口腔プロバイオティックメーカーであるNZのブリステクノロジー社製のオリジナル乳酸菌「BLIS」シリーズの原料・OEM供給を展開。昨年には、若年成人の歯肉炎軽減効果についての新知見も取得。チュアブル・錠菓・トローチを中心に、新規の採用・商談が進んでいるという。炭プラスラボでは、ミュータンス菌やジンジバリス菌、パスツレラ菌に対し短時間での強力な消去能を確認済みの『還元発酵乳酸菌®』の原料供給を展開。100mg/日以上の配合で、「デンタルクレンズ乳酸菌®」および、「ブレスクレンズ乳酸菌®」の商標が使用可能な点が好評という。キティーでは、乳酸菌原料『クリスパタス菌KT-11』を展開。日本大学と共同で、歯周病発症と関連のある唾液中のIgAの産生量促進作用に加え、ヒト試験で歯周病菌減少効果を確認済み。プラークの減少や歯茎の腫れや赤み減少効果も確認している。グミサプリやチュアブル、口溶けの良いフィルムタイプの商品開発が活発化しているとのこと。

 

 他にも、日新製糖では環状オリゴ糖『CI-Dextran mix』を供給。糖の存在下でもプラーク形成を促す不溶性グルカンの合成を抑制する効果や、エナメル質の脱灰度の抑制効果を確認済み。また麻布大学との共同研究で歯周病菌に対する効果も確認済み。加工しやすい点を特長とし、サプリ、ガム、のど飴、口中清涼菓子向けに供給が進んでいる。機能性表示食品も届出中という。オリザ油化では、『花椒オイル』を展開。臨床試験では、花椒の辛味成分に含まれるヒドロキシ-α-サンショオールが侵害刺激受容体のアゴニストとして作用することで、強い唾液分泌作用を促進することを確認済み。う蝕や歯周病の原因菌となるミュータンス菌やジンジバリス菌の増殖抑制も確認している。㈱サビンサジャパンコーポレーションでは、インド産秋ウコンから抽出した『クルクミンC3コンプレックス』を口腔領域で提案。抗菌作用により口腔内の細菌増殖を抑制し、抗炎症作用で口内の炎症を軽減するという。また、強力な抗酸化作用によって口腔内の酸化ストレスを軽減し、口臭改善にも寄与するという。

 

 オーラルヘルスに有効な機能性素材の研究開発が進む中、2018年には口腔領域で初の機能性表示食品が誕生。これまでに、還元型コエンザイムQ10やエピガロカテキンガレート、ラムノーザス菌L8020株やロイテリ菌などを機能性関与成分とし、「お口の潤いに役立つ」「口腔内環境を良好に保つ」「健康な歯ぐきを維持する」などの表示で受理された累計数は39品(撤回6品含む)となっている。常磐植物化学研究所では、植物エキスで唯一、「健常な女性の歯ぐきを丈夫で健康に保つ」との表示で受理実績を持つ、ゲッケイジュ葉エキス『ローレッシュ®』の原料供給を展開。基原料に歯周病菌に対する抗菌作用が期待できる成分「デアセチルラウレノビオリド」を高含有する月桂樹の葉を使用。持続性のある爽やかな風味と体感性を併せ持つことから、口の中に滞留するチュアブル錠、可食フィルム、飴、ソフトキャンディなどを中心に提案を進めている。

 

 これら機能性素材を採用したハミガキ剤や洗口液等の開発も活発化している。一丸ファルコスでは、バイオフィルム(デンタルプラーク)の初期付着を抑える効果を確認済みの『ミルテクト HS』を提案。海藻の一種「ミル」から抽出したエキス。抗菌剤を含むマウスウォッシュなどの洗口液やハミガキ剤などに1%以上配合することで、菌の付着・口臭・歯の着色予防など、機能性をより上昇させることが可能という。主に高級アイテムに採用が進んでいる。また日新製糖の『CI-Dextran mix』、常磐植物化学研究所の『ローレッシュ®』、炭プラスラボの各種ハイドロキシアパタイト原料、化粧品や医薬部外品に配合可能な原料として提案している。ハミガキ剤や洗口液の開発サポートおよび、小ロットからのOEM供給で定評のあるアイワでは、「プロポリスや乳酸菌など、食品素材を用いたハミガキ剤のOEM依頼が増えている」といい、得意の自然派ハミガキ剤のOEM提案を強化している。受注が好調なことから、現工場の向かい側に新工場を建設。新たに800kg釜を導入して今秋から増産体制を整える。

 

 厚労省の統計によると、2023年の薬用ハミガキ剤の国内出荷金額は前年比6.5%増の約1,624億円。口中清涼剤は同14.5%増の約196億円。今年第1Q(1〜3月)も薬用歯磨き剤は前年同期比7.5%増、口中清涼剤は同7.0%増で推移している。この他、トラストレックスでは、唾液分泌量増加やドライマウス対策に有効なデータを持つ歯茎マッサージャー『サリオ
ーラ・ボーラ』を展開。歯科医ルートや健康サロン、無店舗販売ルートなどで人気が高いとのこと。つづく

 

 

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