特集【注目の伝統食材】 伝統に新たな付加価値プラス

 1975年頃に食べられていた食事の組み合わせが健康寿命を延ばす――。東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らのグループが行ったマウス試験で明らかになった。1960年代から現代までの日本食を健康有益性の高さで評価した結果、1975年頃の日本食が肥満を抑制したほか、加齢性疾患である糖尿病、脂肪肝、認知症を予防し、寿命延伸に繋がったという。1975年頃に食べられていた献立の特徴は「食材の種類をたくさん」「調理は“煮る”を優先」「豆や豆製品を積極的にとる」「魚は毎日食べる」「海藻・野菜・きのこをたっぷり」など。

 

 研究グループはこの特徴を有した食事を1975年型日本食として、ヒト介入試験も実施した。その結果、現代食と比べて、「健常人に対しストレス軽減や運動機能向上を、軽度肥満者に対してBMIの低下を認めた」としている。日本食のヒト試験はこのほか、東北大学大学院の松山紗奈江氏らによる研究成果も報告されている。45~74歳の男女9万2,969人を対象にした試験では、米、味噌汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶、牛肉・豚肉の摂取量をスコア化するJapanese Diet Index(スコア範囲:0~8)を用いて評価した。その結果、日本食のスコアが高い人は総死亡リスクが14%低下したことを確認。心血管疾患による死亡のリスクは11%低下したという。

 

 食の欧米化が進む中、玄米回帰をテーマに掲げた独自の取り組みもみられる。㈱食健は、「千坂メソッド」に基づく食事法を提唱している。玄米食を柱とするこの食事法は、創業者である千坂諭紀夫氏が、自身の体験をベースに健康に導く食べ物などを分類したもの。40年以上にわたり、延べ10万人以上の実践者によって確立された理論だ。血液に悪い影響を与える食品を「酸性」、血液に良い影響を与える食品を「碱性」、身体を冷やす食べ物を「陰性」、身体を温める食べ物を「陽性」と分類し、食と身体の関係性を因果表としてまとめている。

 

 漬物、梅干しをはじめとする和食全般の基礎調味料として身近な“塩”。味付けはもとより、雑菌の働きを抑える防腐作用や発酵を助ける作用、うどんのコシを出すグルテン形成、かまぼこに粘り気や弾力を付与させるなど、幅広い用途がある。梅は、漬物はもとより、飲料や菓子といった分野に利用の裾野が広がっている。梅のクエン酸含有量は約1.6~4%、他の果物よりも多いことが特徴。クエン酸含有量は梅の加工法によって増加することが知られ、梅1kg当たり約20~25g生産される梅肉エキスでは、クエン酸含有量は50%を超える。

 

 消費者向けの販促では、テレビCMやSNSでの情報発信を強化していく取り組みもみられる。伯方塩業㈱では、「初夏の梅
シーズンに合わせて、梅干し関連のCMを全国で予定している」という。SNSは6月以降、「塩仕事キャンペーン」も予定、同社のオリジナルワード「塩仕事(塩を使った手仕事)」を謳い、塩の需要拡大に取り組んでいる。今秋にはJR松山駅に同社初のコンセプトショップのオープンも予定。また、塩は伝統的な調味料としての活用法以外に、熱中症対策や補水対策としての活用も進んでいる。 富山湾海洋深層水を活用した塩・にがり製品を取り扱う五洲薬品㈱は、電解質補給水『経口補水パウダーダブルエイド』を展開している。水に溶かすだけで水分と電解質を効率的に補給できる商品。アスリートのほか、子供から高齢者まで幅広いユーザーを獲得している。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1791号(2024.7.3)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら