特集【24年上期総括・化粧品受託製造】 製造コスト増に苦慮も、増収5割

 本紙編集部が化粧品受託企業200社を対象に実施した取材・アンケート調査の結果(有効回答126社)、今年上期(1〜6月)の経営状況について「良かった」と回答した受託企業は、昨年調査より8.6ポイント減の30.0%、「悪かった」との回答も同4.5ポイント減の12.2%、「どちらとも言えない」との回答が同13ポイント増の57.7%と大幅増加した。今年上期の増収企業も、昨年調査より9.2ポイント減の51.4%。減収は同2.7ポイント減の23.9%、横ばいは同6.5ポイント増の24.8%となった。増収企業からは、「既存顧客の売上回復」「新規大口案件の獲得」「輸出案件の増加」「メイクアップ関連のV字回復」などの明るいコメントが見られた。

 

 一方で今回、受託企業の多くからは、「増収減益」との声が聞かれた。背景には、製造に関わるコストの高騰が挙げられる。多くの受託企業は、昨年にはブランドオーナー側との値上げ交渉を終えており、さらにコロナ収束に伴う既存顧客の販売回復、新規顧客からの受注獲得などを受け、受注数量や売上高は回復基調で推移している。ただ長引く円安下で、製造コストの上昇は依然続いており、加えて工場での慢性的な人手不足から、パートの時給アップなど人件費も嵩んでいることから、利益を圧迫される企業も少なくない。

 

 業界の景気動向を示す設備投資については、今年上期実施企業は45.1%。昨年調査より2.7ポイント減少した。一方で「新工場建設」を行った企業は6社と、企業間で業績の二極化が見られる。海外輸出向け製品や海外企業からの受注は、コロナ収束で、「実績あり」との回答が、昨年調査より7.3ポイント増の86.6%に。ただ輸出先1位の中国案件は、度重なるレギュレーション改正等で動きが鈍化。中国国内の景気低迷で消費減少も見られるようだ。こうした中、今年上期の海外向け受注が前年より増えた企業は、昨年調査より8.9ポイント減の26.3%。増加企業からは、「ベトナムをはじめアセアン地域での輸出が伸長」「EUへの輸出が増加」などの声が聞かれ、中国以外の国への輸出は順調のようだ。

 

 今年下期の経営見通しについて「良くなる」との回答は、昨年調査より16ポイント減の30.9%。増収見込み企業も同19.1ポイント減の56.0%に。多くは「現状維持」と回答した。今年通期の市場展望を聞いた調査では、多くの企業が市場は上向きになると回答。一方で、製造に関わるコストの高騰で、利益が圧迫される状態が続くとのコメントが多かった。今年上期には受託企業の倒産や身売り、M&Aなどが数件見られた。今後は企業間格差が、より鮮明化する可能性もある。つづく

 

 

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