ZOOM UP【馬の油】 市場のV字回復に期待

 2016年頃まで続いた訪日外国人観光客による爆買いの後、馬油製品の市場は一度大きく沈んだ。厳しい市場環境下、メーカーおよび販売各社では、馬油100%の純馬油をはじめ、クリーム、化粧石鹸、クレンジング、シャンプーなどの定番製品に加え、話題のタマヌオイルやバオバブ油、シアバターなどの植物油を組み合わせた製品、天然精油で香り付けをした製品――など、市場ニーズに合わせた製品開発をはじめ、パッケージデザインや価格帯の見直し等、購買層を意識した取り組みを推進。同時に、新規ユーザーにもわかりやすいように、ヘア・スカルプケア、踵や膝の保湿など、馬油製品の使い方を丁寧に解説するWEBページやYouTube動画を製作。またSNSを通じた情報発信など、ハード・ソフト両面での馬油製品のブランディングに注力してきた。

 

 これら各社の懸命の努力が徐々に結実、馬油製品を知らなかった若年女性層など、新規ユーザーの掘り起こしに成功、ここ数年で馬油製品は、ご当地コスメから自然派コスメとして認知され、再び日の目を見始めている。特にコロナ禍では、マスクやアルコール消毒剤の常用に伴う肌荒れ、手荒れケアとして馬油製品の良さを実感したユーザーも少なくない。“全身に使える万能オイル”と呼ばれる馬油製品は、赤ちゃんのスキンケアにも有効なことから、メーカーや販売会社では、ベビー用馬油製品の開発や販売促進を強化。最近では、大手ベビー用品店のアカチャンホンポや西松屋でも馬油製品を取扱っている。また、女性特有の悩みを解決するフェムケア市場の開花を受け、古くから産後妊婦の妊娠線ケア等に利用されてきた実績を訴求し、妊娠線やデリケートゾーンのケアアイテムとして提案する企業も出始めている。さらに、ペット市場でも犬猫の毛や地肌に優しいシャンプー類、肉球ケアのクリーム等が人気となっている。各社からは、ペット用品メーカーや卸、ペットショップなどからのOEM案件も増加しているとのコメントが聞かれた。

 

 今年2月には、TVのバラエティ番組で馬油シャンプーの全国統一史に関する放送があり、一部のOEMメーカーでは問合せが増えているとのこと。コロナ収束に伴い、インバウンド需要も回復しつつある。観光庁の発表では、2023年の訪日外国人観光客数は2,507万人に。前年比では6.5倍に伸長、ピーク時の2019年と比較しても78.6%まで回復している。首都圏のドラッグストアやバラエティーストアの店頭には、インバウンド需要を見込んで、シャンプーやトリートメントをはじめ、馬油製品を目立つ位置に配置する動きが見られる。実際、九州や北海道など外国人観光客に馬油製品が人気のエリアでは、土産物店からの発注が増えてきたとするメーカーや、航空機内での販売が再開したとするメーカーも。円安下で日本製品のお買い得感が高まる中、今後インバウンド需要が馬油製品市場にとって、V字回復への追い風になることも期待される。つづく

 

 

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