【話題追跡】 昆虫食ベンチャーの破綻、サプライヤーの本音

 「まだ時代が早かった」「昆虫食にする必然性が見つからない」「SDGsというキレイ事だけではビジネスできない」――。昆虫食ベンチャーの破綻は多くの反響を呼んだ。今年1月、食用コオロギを養殖するクリケットファームが採算の悪化を原因に倒産した。負債総額は2億4,290万円。参入から僅か3年での破綻に、昆虫食を不安視する人にとっては、安堵の声が聞こえるなど、賛否がわかれる状況が露呈した。

 

 そもそも昆虫食ブームはなぜ起きたのか。2020年に発売となった無印良品のコオロギせんべいの完売が各メディアで報じられ、注目を集めた。タンパク質危機を旗印に多くのベンチャーが参入。農水省のフードテック官民協議会では、昆虫ビジネス研究開発ワーキングチームが設立されるなど、まさに追い風が吹いていた。流れを変えたのは、「コオロギ給食」。SNS上では、「子どもに食べさせるな」などのクレームが相次ぎ、大炎上。その後、「食糧危機を絡めることに疑問を感じる」といった実業家らのメッセージも拍車をかけ、昆虫食は一気に逆風にさらされることになった。

 

 昆虫食サプライヤーにとって不幸だったのは、誤った情報が独り歩きしたことにある。徳島県内の高校がコオロギパウダーを使った給食を提供したとする報道は説明不足で、正しくは専門科目での集団給食であり、試食は希望者のみ。アレルギーなどについても説明されたという。原料サプライヤーのグラリスは、「高校生のアイデアに協力した」格好であり、強制ではなかった。別の原料サプライヤーは、昆虫食を食べたいというニーズに目が向けられていないことに疑問を呈する。「昆虫ビジネスを一過性のブームにしたくない。昆虫食否定派が多いことは承知しているが、食べたいという人も一定数いることも事実。いまは、生産したものをどのように売るかという出口戦略や、食べるメリットをわかりやすく説明することが大事」と指摘する。つづく

 

 

 

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