【有識者インタビュー①】 久保 明氏「抗老化のカギは、“酸化”と“糖化”」
高齢化が進む中、サプリ業界では抗老化のエビデンスが積み上げれらている。ポストコロナで、消費者ニーズが変化する中、今メーカーが考えるべきエイジングケアの視点とは?サプリメント療法にも精通する、医療法人財団百葉の会 銀座医院院長補佐・東海大学医学部客員教授の久保明氏に話を聞いた。
年齢を重ねると、糖尿病や脂質異常など生活習慣病のリスクが高まるので、臨床的な視点から、エイジングをマネジメントすることが重要だ。「エイジングマネジメント」には当然、老化に対する指標が必要となる。例えば、握力。エイジング指標として、握力は非常に有用だと昔から言われてきた。今年に入り、握力の変化と認知症の兆しの相関関係を指摘する論文も発表されており、単なる身体活動という枠を超えた意味があると考えられる。また、副腎機能も老化に大きく関係している。副腎の皮質に含まれるDHEA-sは、長寿因子との反比例の関係が指摘されており、今後の研究の進展が待たれる。
老化のメカニズムを紐解くと、生活習慣、遺伝などの外的要因に加え、身体の酸化・糖化・炎症の3要素が深く関わっている。酸化ストレスが老化に繋がるということはよく言われてきた。血管の壁や細胞に対して、活性酸素が障害を引き起こし我々の身体を痛めつける。さらに近年は、抗糖化に対する研究が進展。身体の中でタンパク質が糖化するとAGEsとなり、細胞内の受容体を介してNADPHオキシダーゼと結合し、活性酸素種(ROS)の発生、転写因子(NF-κB)による炎症が引き起こされる。
糖化・酸化・炎症は、お互いに深く関わっているが、実際の臨床では、それぞれを評価する指標の相関性が確認できないケースも多い。有効な結果に至らない一因として、各指標が意味する時間的経過の差がある。例えば、動脈硬化を予防するには数年の経過観察が必要だし、糖尿病の発症には5~10年のプレ期間がある。長期的に進展する疾患に対して、何を指標とし、どういう形でサプリの摂取することが有効かを考える必要がある。さらに、成分の種類、投与量、遺伝的因子の影響、体内の吸収経路等も試験デザインの考慮に入れる必要がある。
AGEsと筋肉には、綺麗な負の相関関係が認められている。AGEsの増加は筋肉量・筋力の減少、高齢者の呼吸機能の低下に繋がる。糖尿病症例では18%がサルコペニア症状に陥っているというデータもあり、筋力の低下は、糖尿病の要因となることが示唆されている。抗糖化作用のある成分としてはクルクミン、ケルセチン、レスベラトロール等がある。糖化と酸化が結び付いていることを理解した上で、40代前後からこれらのサプリを摂取することが効果的だ。つづく
詳しくは健康産業新聞1746号別冊「エイジングケア」(2022.8.17)で
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