特集【注目の植物油―アマニ、エゴマ、米、アルガンなど―】 新油市場280億円、機能性の追求で付加価値提案進む

 植物油市場には、一般的な調理に使用される大豆と菜種の混合油である調合サラダ油をはじめ、「新油」として市場拡大を続けているアマニ、エゴマ、MCT、アルガン、米、オリーブ、ココナッツなど多岐にわたるオイルが流通。同じ植物油でも原料によって脂肪酸組成に特徴があり、調合サラダ油にはオメガ6脂肪酸(リノール酸)、エゴマやアマニにはオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)、米油やオリーブ油にはオメガ9脂肪酸(オレイン酸)が豊富に含まれる。オメガ6脂肪酸は、現代の食生活で充分摂取できているが、オメガ3脂肪酸は摂取不足のため、オメガ3脂肪酸の取り入れ方として、食事摂取基準2020年版では「1日目安摂取量1.6g~2.2g(成人)の小さじ1杯分」を推奨している。

 

 日本脂質栄養学会では、体内における油脂の働きとして、①細胞膜をつくる、②脳・神経の働きを保つ、③血液をつくる、④体温を維持する、⑤肌・髪の潤いを守る―― などが報告されている。また、エゴマやアマニなどオメガ3脂肪酸の豊富な植物油には、①セロトニンを活性化する働き、②腸の老化を防ぐ、③大腸の働きをサポート―― なども報告されており、腸活を訴求した活用も浸透している。過熱に弱いため、「炒める」「揚げる」「焼く」用途ではなく、良質な油を生のまま摂る“かけるオイル”の市場構築が進んでいる。

 

 植物油は、歴史的な原料高騰に見舞われている。農水省「令和3年植物油脂の油脂(原油)生産量及び在庫量」によると、2021年の可食油は167万t、うち輸入は160万tを占める。近年は、バイオディーゼル向けなど世界的な食用油需要の増大や、北米、南米、欧州など原料生産国の天候不順、コロナ禍による人手不足や減産に加え、円安ドル高による原料調達コストの上昇、ロシアのウクライナ侵攻による穀物需給不安の高まりなども影響している。かつてない世界的な原料価格の高騰に伴い、食用油最大手の日清オイリオグループをはじめ、J-オイルミルズなど大手各社では、昨年から今年にかけて家庭用、業務用とも安定供給を前提とした食用油の価格改定に取り組んでいる。

 

 日清オイリオグループの定点調査(『インテージ社SCI-pデータをもとにした日清オイリオグループ推計』)によると、アマニ油、シソ・エゴマ油、米油、MCTオイルを中心とした「新油」の2021年の市場規模は約280億円(前年比4%減)に。内訳は、アマニ油80億円、シソ・エゴマ油41億円、ココナッツオイル8億円、MCTオイル18億円など。コロナ禍で引き続き内食化率が高まる中、“かけるオイル”戦略として、マンネリ化対策や手軽さを求める消費者ニーズに対し、新たにオイルで味つけする「味つけオイル」の提案など、クッキングオイルの継続的な価値訴求型商品の展開で前年規模を維持している。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1745号(2022.8.3)で
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